近所の豆粒町。

オチビサン

僕は「オチビサン」という漫画が好きで、今でも気が向くと本棚から引っ張り出してページをめくる。現代社会では忘れられてしまったような日本の季節や旬を感じさせてくれるストーリーと、登場人物の純粋なキャラクターが気に入っている。

その舞台となっているのが、鎌倉に存在する架空の町、「豆粒町」だ。もし実在するならそこに住みたいと半ば本気で考えるほど、魅力的な町である。



豆粒町を思わせる路地

さて。実は近所に、イノと僕が「豆粒町」と呼ぶ小さな路地がある。住宅街の中を文字通り這うように抜けている、大人が腕をいっぱいに広げたら両側の壁に手が届くようなとても細い路地だ。なぜ僕らがこの路地を「豆粒町」と呼ぶのか? それは両側の庭々から張り出している木々がなかなか楽しいからだ。

例えば、バラエティ豊かな果樹がそこかしこに植わっている。思い出すだけでも梅、枇杷、柿、それに数種類の柑橘……といった具合だ。加えて、花を咲かせるものや秋冬に紅葉するものがちらほらとあり、これらも目に嬉しい。ちなみに今の季節だと、まだ未熟な柿の実が頭上に青々とぶら下がっている。この柿が秋に向かって少しずつ色づいていくと思うと、それだけで少し嬉しくなってくる。もちろん、もいで食べたりはしない。

そんな季節ごとの表情を楽しみたいがために、わざわざ少し遠回りしてこの路地を抜けたりもする。仕事帰りの退屈な家路も、この路地を歩けば季節に彩られた散歩になるのだ。