ピーコート。

物持ちがいい方だ、と自分でも思う。

衝動買いが苦手で、店頭で何かに一目惚れしても、もう一度ゆっくり吟味してからでないと納得して購入できない。たまに珍しく勢いで買うと、高価なモノだろうが100円の小物だろうが後で軽く後悔することが多い。

その代わりということでもないけれど、納得して手元に置いているものはどれも愛着があるし、丁寧に手入れしながら長く使いたいという気持ちが自然とある。例えば、ワードローブには20年以上前に購入した服もいくつかぶら下がっている。なんとなく捨てられないというのではなく、どれも愛着があり今でも着ている服だ。

ファッションに限らず、仕事道具から文房具、インテリア・雑貨に至るまで、20年選手と言わないまでも、吟味→入手→愛着→手入れしながら長く使う、という傾向は身の回りの多くのものに当てはまる。今これを書きながら座っているイームズのシェル・チェアも、1997年にパリで購入したデッドストックだ。店の倉庫からホテルまで、この椅子を担いでメトロに乗って帰ったことを覚えている。もちろん今でも現役で、仕事用のデスクで使っている。改めて23年前と思うと、なかなか感慨深い。



そんなもののひとつが、ピーコートだ。確か20代半ばの頃に購入したもので、やはりかれこれ20年来の付き合いということになる。元々が丈夫なつくりということもあり、これも立派に現役だ。

当時、古着屋で「どこかの海軍で実際に使われていたものだ」と聞いて購入した記憶がある。その真偽は定かではないが、ブランドのパッチも洗濯表示のタグもないので、案外本当にそんな出自なのかもしれない。シンプルで無骨で、それでいてすこぶる上品な印象がある。今どきの小洒落たピーコートにはこういった雰囲気というか風情というか、なかなかないと思う。要するにとても気に入っている。

とはいえ、いくらかのダメージが隠しきれないのもまた事実だ。ハンド・ウォーマーの内側は生地が破れているし、真鍮のボタンも数が足りなくなっていた。今さらながらボタンをよく見ると、表面のモチーフもバラバラだ。20年間も気づかなかったことが不思議だけれど、恐らく購入時からそうだったはずだ。

そういうところに気づいてしまうと、なんとなく袖を通すのが気恥ずかしくなってしまう。そこでボタンを全部付け替えることにした。

ピーコート

ボタン付けが苦手とは言わないが、慣れない作業はどうしても時間がかかる。7ヶ所(8個)のボタンを付け替えるのに結構な時間がかかってしまった。しかしこの手のメンテナンス作業はとても楽しい。ボタン付けを終えて全体を念入りにブラッシングすると、思ったより艷やかに蘇った。

外した古いボタンと付けたばかりの真新しいボタンを見比べると、同じようなモチーフの同じような真鍮ボタンなのにやはり風合いが違う。これからまた長い時間をかけて少しずつ風合いが変わってゆくことを考えると、今から楽しみで仕方がない。